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執筆者の写真佐藤あつし

23区議員からみた大阪都構想・雑感

更新日:2021年2月25日

(1)なぜ市を無くして自分たちで自分たちの権限を無くすのかという疑問

23区の議員としては、財源を大きく都区財政調整制度(※1)に依存していることから、常に東京都に対する依存財源であり、この取り分をめぐって、長らくの抗争を続けてきました。地方分権の中で、区に権限がどんどん下りてきても、なかなかこの額が増やされずに、困ってきました。


そういう意味では、なぜ大阪市を壊して、わざわざ東京みたいに大阪「都」と区に分けて、区の権限を落とすようなことをするのかな、と批判的に見ていました。むしろ23区は「政令市」さらにはその先にある「特別自治市」を目指したいところなのです。


そうすれば、東京都との財源配分論争なく、自分たちのお金で自分たちの事業に使うことができます(この議論はある程度の人口が必要なので、墨田区単独ではなく、合併が前提の議論となります)。



(2)住民に身近な政治家が誕生するというメリット?

他方で、何百万人という自治体に1人の首長と1つの議会だけでは、住民と政治家の距離が遠く、これを解消する手立てが必要なのもまた事実です。


例えば、墨田区は27万人で区長が1人、区議が32人ですが、大阪市は、270万人で市長が1人、市議が83人です。


人口は10倍ですが、市長は同じ、議員数は3倍で回しています。これでは市長や市議の仕事は大変だなぁ(政令市の皆さんは全員そうだと思います)、とも思います。


これを4つの区にすると、区長が4人になりますが、今回の構想では市議定数=新しい区議定数となり、議員数は変わらないので、この点のメリットは、あまりありません。



(3)まとめ

その他、様々な論点はあるのですが、23区の議員から見ると、あまり権限の上でのメリットはないように思いました。むしろ、大阪市の権限を強化し、区ごとの意見を集約することのできる仕組み(23区も過去に行っていた区長準公選制度(※2)の導入や、区ごとの擬似議会の設置など)を導入して、政令指定都市のデメリットの部分を解消していくことで、現行制度を運用していくことにメリットを感じました。


大阪のことは大阪の住民が決めるので、それで結構なのですが、個人的には、この結果にホッとしています。


今後は、こうした民意の下に、今回争点となった二重行政の解消や権限配分論をどうするのかという前向きな議論に至ることを祈っています。



(※1)都区財政調整制度

通常、市には固定資産税や法人住民税が入ってきて、その金を市が自由に使うことができますが、23区は法律で特別に東京都に入り、そのうち約45%が広域事務分として東京都が受け取り、残り約55%を23区が受け取ることととなっていて、その中でさらに23区に再配分される仕組みとなっています。この割合について、昭和50年当時は40%だったものが、長年の特別区側の主張により、現在55.1%となっています。


(※2)区長準公選制度

昭和50年まで、23区は区民が直接区長を選べない制度となっていましたが、この中で住民運動が起こり、区民が住民投票を行い、その当選者を区長に任命する動きがありました。こうした23区民の不満がついに国を動かし、昭和50年、23区住民は、区長の選挙権を獲得したのです。つい最近のことです。

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