先日、Clubhouseで飲食店関係者の方から、このような質問を受けました。意外と正確に知られていないのだ、これは記事にしておいたら有益な情報かもしれないと思いまして、ここにまとめておきます。
1 法律ではどうなっているか
現在、知事が行っている店舗への時短営業のお願いは、コロナ対策の根拠法である、新型インフルエンザ等特別措置法に根拠をもつ「協力依頼」(法第24条第9項)であり、あくまで「お願い」です。
◆新型インフルエンザ等特別措置法 (都道府県対策本部長の権限)
第二十四条 都道府県対策本部長は、(中略)必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、(中略)必要な協力の要請をすることができる。
その上で、緊急事態宣言中は、さらに「時短営業のお願い」についていくつか段階を設定して、踏み込んでいくこととしています。
(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、(中略)生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、(中略)学校(中略)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する(中略)に対し、当該施設の使用の制限(中略)を講ずるよう要請することができる。
3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、(中略)特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。
4 特定都道府県知事は、第一項若しくは第二項の規定による要請又は前項の規定による命令を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。
5 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は第三項の規定による命令をしたときは、その旨を公表することができる。
上記の通り、「要請」(法第45条第2項)、「命令」(同第3項)と段階を踏んで、進んでいきます。この「要請」または「命令」が出た場合、知事により、店名等が公表される可能性があります(同5項)。
最終的に「命令」が出た段階で、過料(正確には異なりますが、罰金のようなもの)30万円以下を課せられる可能性が出てきます(同法第79条)。
また、現在(令和3年3月16日時点)で、命令を課された店舗は存在していません。
2 営業し続けていいのか
あくまで「協力要請」「要請」段階ではお願いであり、店舗によっては1日6万円の補償金では対応しきれないことから、営業を決断する店舗もあると思います。
パーテーションの設置や黙食(いわゆるマスク会食)の励行、手指消毒の徹底など、徹底的な感染防止対策を行っていれば、感染リスクは極めて低いと判断されます。したがって、このような対策を行なっていれば、知事の「協力依頼」に従うかどうかは、あくまで飲食店の判断に委ねられています(ただし、これに従わないと協力金は出ません)。
したがって、今の段階では、時短営業をせず、営業し続けてもいいことになります。もちろん、法の趣旨からすれば、感染防止対策があった上での話です。
3 営業の自由を大切にする
憲法では、営業の自由が保障されています(憲法第22条第1項)。このため、新型インフルエンザ等特別措置法も、こうした人権に最大限配慮し、上記のように、いきなり営業停止命令というようなことではなく、要請、命令、過料と慎重に段階を踏むことを求めています。これは国民の代表である国会議員が決めたルールです。
しかも、同法では、これらの発出に際しては、「専門家の意見」を聞かなければなりません(第45条第5項)。
これらの「要請」や「命令」は、知事が独断で一律に時短営業を強制するのではなく、個々の店舗の営業状況に応じて、専門家の意見を慎重に判断して実施することになっています。
飲食店の皆さま、特に一日6万円の補償金では足りない皆さまは、大変な中で苦悶していることと思います。この国は法治国家です。皆さまに保障されている憲法上の営業の自由、そして知事の権限を縛る新型インフルエンザ特措法があります。
もちろん、コロナの収束は国家的課題で、しっかりと取り組まなければなりません。まったく感染防止策を講じないで営業している店舗は規制を受けても仕方がありません。他方で、しっかりと対策を講じている皆さまの営業がこれと同じ規制で犠牲になっていいわけではありません。それは、正直者がバカをみることになってはいないか、と私はとても危惧してます。
この情報が届き、しっかりと自らの立ち位置を明確にして、間違っていることには間違っているということができるように、この記事を書きたいと思いました。
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