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(解説)ロシア側の国際法上の主張と今後の流れ

更新日:2022年2月28日



 ロシアがウクライナに対して軍事行動を開始しました。大変憂慮される事態です。


 ロシアの行動を見ていると、国際社会で非難を浴びないよう(西側諸国の反撃を受けないために)、法的に周到に用意されている計画であると分析できます。


 もちろん、ロシアの法的主張は、西側諸国からは、国際法上失当なものであると批判されていますが、それでもなお国際法上の非難を回避するために、ロシアによって一応組み立てられた法的ロジックを前提にすると、次の展開が見えてきます。


ロシア側の国際法上の主張

①ウクライナ内・親ロシア2地域が独立を宣言
②ロシアが国家として承認(承認は国家の自由裁量行為なので国際法的な非難を受けない)
③この親ロシア2国家が、ウクライナ側から攻撃を受けたと主張(ニカラグア事件国際司法裁判所判決)
④この新国家から援助の要請(同判決)
⑤この新国家とロシアの間の集団的自衛権に基づいて軍事行動(国連憲章第51条第1段)

ロシア側の主張する法的根拠に基づくとすれば、次の対応が予想されます。


今後の流れ

⑥国連憲章51条第2段に基づく国連安保理への報告
⑦国連安保理での論点
(1)ロシアの行動について、③の事実があるか
(2)③の事実があるとして、ロシアの行動は、⑤国連憲章に基づいた軍事行動であるとして、(国際慣習法上の)「必要性及び均衡性」があるか
(3)これらがあるとして、ロシアの軍事行動は、国連安保理の「国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」(国連憲章第51条第3段)までしか認められないので、国連安保理はどのような行動をするか

ここで、ロシアが安保理の常任理事国であり、拒否権を有することから、この措置が講じられる可能性は極めて低いと予想され、法的には、ロシアサイドの理屈のまま進むことになります。


西側諸国の対応

 これを突き崩す西側諸国の論理としては、⑦の時点で、(1)(2)で論破していくしかありません。


 現代戦争には、ミリタリーだけではなく、サイバー・リーガル・・・と様々な局面があることを思い知らされます。


◆国連憲章第51条
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

この現実に日本はどう立ち向かうのか


 今、目の前で起こっている国際社会の現実を、私たちは、生々しく目に焼き付けておく必要があると思います。


 ロシアがあれだけ攻撃してきても、ウクライナに代わって反撃しようという国は出てきません。いや、国際法秩序を守ろうとすると、法的にできない、という表現が正しいのだと思います。そして、中国はロシアの軍事作戦を「侵攻ではない」と表明しました。この2国は、国連の安全保障理事会の常任理事国(拒否権保有国)であります。


国連が助けてくれないのか

 集団安全保障(国連軍の派遣)は、安全保障理事会の決議が必要だ。しかし、ロシア・中国が拒否権を持つ常任理事国であり、彼らが入っている以上、ロシアの主張は正当とされますので、守ってくれるはずがありません。


米国(NATO)は助けてくれないのか

 ウクライナは、集団的自衛権を期待できるNATO(北大西洋条約機構)には加入していません。集団的自衛権を行使しようにも行使できないのです。


 ウクライナは個別の援助要請により、各国への支援を求めることができるに過ぎません。これには法的根拠(条約)がないため、各国がウクライナに対して軍事的に助力するかどうかは不明です。


ウクライナは自力で反撃するしかない

 西側諸国は経済的制裁を通じて間接的な圧力をかける手段に終始しています。


 軍隊のない国(周辺国との軍事力に極めて差のある状態の国)、集団的自衛権を行使できない国の反撃方法は極めて限られています。


 平和と軍事が表裏一体であり、どちらかだけはあり得ないということを、(その理想は別として)まざまざと突きつけられます。


 自分の国家は自分で守るしかないですし、守れないならば、国際的な安全保障のネットワークを構築する(集団的自衛権)という現実的な対応を日本もしっかりと取っていく必要があります。


 

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